「もう、独りぼっちはイヤだから・・・」






かつて「魔獣」を使い宇宙を掌握せんとした者、ナイトメア。

そのナイトメアが持ちうる知識と力の全てを使い創り上げた最高傑作。

魔獣「カービィ」。それは親であるナイトメアさえ越える力を、その小さな身体に秘めていた。

カービィは生まれてすぐに「トイ・ボックス」と呼ばれる隔離施設へ送られた。

それはナイトメアが気に入った魔獣や、その「素材」となるものを保管しておく場所だった。

カービィはそこで、自分と同じ境遇の魔獣に会った。マルクといった。

マルクはカービィがそこに来る以前から、ずっとここに閉じ込められているのだという。

マルクはまだ幼く、何も知らないカービィの面倒を見てくれた。

このトイ・ボックス以外に世界を知らないカービィにとっては、マルクは世界の全てだった。

マルクは時折カービィに漏らす。いつか此処を出よう、と。

此処を出て、自由になろうと。



暫くして、トイ・ボックスはナイトメアに対抗する勢力、「銀河戦士団」の者らにより襲撃された。

それは二度と訪れることのないであろう、脱出の機会だった。

マルク。出られるよ。ここから、出られるよ。

しかしマルクは、その戦士団の者にこう告げた。「この子だけ、連れて行って。」

なんで。カービィは叫ぶ。マルクは言う。自分が一緒に居ると、逃げ切れなくなるのだと。

カービィを乗せ、戦士団の宇宙船がトイ・ボックスを離れていく。

マルク。もう叫んでもその声は聞こえない。手を伸ばしても届かない。

マルクはカービィに向かって手を振る。笑顔だった。

そしてその笑顔が、記憶の中の最後のマルクだった。

カービィはずっと大粒の涙を流して、泣いた。



カービィもまた無事では済まなかった。

カービィは魔獣。ナイトメアの手駒。戦士団にとっては忌むべき相手。

公の元に晒されればなぶり殺しにされるだろうし、そうでなくてもいずれ貴重な魔獣として実験台送りにされるだろう。

生きる道はただ一つ。

「星の戦士」。永遠の寿命を持ち、一生を戦士団に捧げる戦士として従属し、戦い続けることだった。



カービィの内に秘められた力は絶大だった。彼は瞬く間に戦う手段を覚え、そして強くなっていった。



彼はやがて英雄となった。戦士団の宿敵たる、ナイトメアを討ち取ったのだ。

しかし同時に、奴は不死身であり何時かまた蘇ること、そして戦士としての使命が果たされていないことを知った。



それでも彼は戦い続けた。



戦い続けるしかなかった。

「星の戦士」で、「魔獣」。彼の居場所は何処にもなかった。



彼は宇宙を放浪し続けた。それはかつてナイトメアが宇宙中にばらまいた魔獣の残党を倒す為であり、

そして、「もしかしたら有るかもしれない」自分の居場所を探す為でもあった。



けれども「それ」は見つからない。

カービィは常人にとってはあまりに特異な存在過ぎた。

その常ならざる力を見て、あるいは何十年経とうと少しも変わらない外見を見て、彼を「化け物」と、あるいは「悪魔」と呼んだ。

間違えでないことが悲しかった。本当に「化け物」だし、暴力でしかその使命を果たせない。

そして暴力が故にまた新たな戦いを呼ぶ、「悪魔」だった。



そんな中で、奇跡のような偶然の出会いがあった。

カービィの怪物じみた強さを、決して歳をとることのない身体を、彼が争いを呼ぶという事実を知っても逃げない。疑わない。非難もしない。

それどころかカービィを受け入れ、支えようとしてくれる、そんな人間との出会いが。

それは決してありふれた物ではなかった。

百年経ち、二百年経ち、五百年を過ぎ、千年が経とうかという頃になってあるかないか、そんな奇跡だった。

カービィはそれを手放したくなかった。

例え自分が居ることで、その人達に危害が及ぶかもしれないと分かっていても。



そしてそんな出会いがあった時、まるで示し合わせたかのようにカービィに迫る影があった。

ナイトメア。かつて宇宙を震わせた最悪の男。

それはカービィの「居場所」を奪おうとする。

カービィはそれに抗い戦う。護る為に。護り切る為に。



しかし例え護り切れたとしても、大切な人は彼の前から消えていく。

カービィの寿命は無限。しかし人間には限られた寿命がある。七十年かそこらで、人間は簡単に死んでしまう。

そこに至るまでの千年という時間よりも、遙かに短い時間で。



彼の去った後には、必ず墓が建てられていた。



何時までも彼は同じことを繰り返していった。

旅をする。新たな出会いを見つける。護る為に戦う。そして、失う。

何時までも、何時までも繰り返していた。

そしてその度に、彼の心の底には、言いようのない黒い物が鬱積していった。











また・・・護れなかったな

二度と動かない、大切な人が目の前にいる。既に聞き慣れた、忌み嫌う者の声がある。

「愛する者も見知らぬ他人も

皆一様に、お前を置いて死んでいく

・・・最後にお前に何が残った?



私だ。お前にはこの私だけが残った」



悪夢は微笑む。嘲りのような、慈愛のような、どちらともつかない笑顔。

「・・・違うッ」

「違わない。これからもお前は失うし、永遠に生き続ける。何も変わらない」

「・・・」

夜より深い闇の心が、彼を侵していく。

「・・・お前さえ」

お前さえ。

「・・・・・・お前さえ、いなければ・・・





・・・誰も不幸にはならなかったんだ!!!」





カービィは、剣を抜いた。

・・・悪夢は、恍惚の笑みを浮かべた。









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